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            JAPAN ECONOMIC REPORT
               08.10.24(通巻601号)

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今夏もあっという間に過ぎ去り、近所はハロウィンの飾り付け、それが過ぎると
サンクスギビング、クリスマスと米国人のライフスタイルも一層スローなモード
へと転じます。トレーダーも年末にかけて新たなポジションは仕込みづらく、市
場の流動性も落ちてきます。間隙を突いて打って出るか、静観するか、悩みどこ
ろです。【編@LA】

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■繰り返される歴史の根底にあるもの
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世界的な株安が止まらない。7月の配信記事の中で、資源価格の高騰並びにその
変化の兆しをテーマとし、そこで、「価格が高くなれば需要が減少するという当
たり前の経済原理が必ず作用する」筈であるという記述をしたが、図らずも、世
界中のあらゆる資産価値が逆回転を早め、経済原理を超える以上の調整がなされ、
そのテーマも「金融システム不安」、「実体経済」へと矢継ぎ早にシフトしてき
ている。

「実体経済」とは言われるものの、経済とはそもそも「実体」があるわけではな
く、人間の心理から成っているというのが私の持論である。勿論、経済のファン
ダメンタルズそのものが重要であることは言うまでもないが、それを人々がどう
感じ、どう考えるかということがより経済活動、或いは、相場の先行きに大きな
影響を与える。経済が循環するという原理も、バブルが発生し、やがて崩壊する
という世の常も、究極的には人間心理が普遍的であることに他ならない。

さて、より具体的な金融・経済の世界へと目を向けると、今回起こっている事象
は90年代後半に日本で起こった事象と類似しているという者もいれば、それと
は全く異なるものであるという者もいる。何れも正解であると思う。95年〜2
000年にかけて、日本で発生したバブル崩壊の最終章をその最前線で目の当た
りにした自分にとっては、先ず、今回米国発で起こっている事象、並びに、それ
への当局の対応は、日本が経験したことに極めて酷似していると感じている。住
専問題、それへの公的資本注入、トレーダーによる巨額損失、証券会社の破綻、
金融機関の大再編、大規模な財政出動、個別行への公的資本注入、金融当局によ
る過剰な迄の流動性供給、新興国の経済危機、そして、実体経済への強い不透明
感、悲観論の台頭。大きな違いもある。これは、極めて早いスピードで一連の事
象が起こっていることである。スピード感という観点では、日本の対応が遅すぎ
たという見方もあろうし、米国の対応が早い、或いは、世界経済がグローバルに
リンクする中で迅速な対応を行なっていかざるを得なかったという事情もあるだ
ろう。とにかく、この早回しで進行する情勢下においては、人々はいつ何が起こ
ってもおかしくないと思わざるをえないし、それに備えた行動すべきと考え方が
極端にシフトすることになろう。

また、欧米のエコノミストは、逆資産効果の影響を過少評価しているのではない
かとも感じる。例えば、米国ではここ数十年の間、土地の価格の下落を経験した
ことがなかった。「逆資産効果」にピッタリ当てはまる英単語も持っていないの
ではないだろうか。しかし、我々日本人はこの逆資産効果が人間の行動心理に与
える強い作用を経験済である。かつて日本でも戦後の高度成長と相まり、地価は
常に上がり続けるという根拠の無い神話があった。そして、バブルが崩壊した後
でさえも「地価の下落率が小さくなった」という事実をもって「景気は回復して
きた」と短絡的に考えるエコノミストがいたが、現実はそれほど甘くはなかった。
地価が上昇へと転じぬかぎり、人間の行動心理は変わらない、つまり、逆資産効
果は続くのである。恐らく欧米経済は当面の間この逆資産効果による消費減退と
いう呪縛から逃れることができずに苦悩することであろう。

全ての市場参加者が悲観的に考えるようになった時、相場の底が確認されるのも
また真である。これは日本でいうと99年の6月に発生した(もっとも、その数
年後にITバブル崩壊の二番底に直面したが)。当時、悲観論が蔓延する中にお
いて、これまで景気の遅行指数として誰もが関心を持たなかったGDPの強い数
字にマーケット参加者は極度に反応し、流れが反転した。GDPの数値発表で相
場が動くのは日本では極めて珍しいことであったが、悲観論者が増えている時代
にはこのような奇妙なこともしばしば起こり得る。これもまた人間行動心理学の
延長線にある話と言えるだろう。普遍的な人間心理、これこそが「歴史は繰り返
されるものである」と言われる所以と言えよう。【編】

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